日本が誇る伝統技法『木目金』の作り方

今回は日本の伝統技法《木目金》について歴史と技法について解説します。

筆者は東京芸術大学工芸科にて金工を、特に木目金やダマスカスが好きで研究していました。

とても手間がかかり難しい技法ですが、唯一無二の美しいデザインが出来上がる木目金は海外でも《mokume-gane》として人気が出てきています。

主に木目金を制作したいクリエイター向けの記事になるでしょうが、歴史や作り方などを解説し、クリエイター以外の方も少しでも興味を持っていただければ幸いです。

 

木目金(杢目金)とは

木目金とは幾重にも重ねた異種金属板を圧力と熱で接合し、その後彫ったり捻ったりして木目のような模様を出す日本発の伝統技法です。

よく使う代表的金属は ・銀 ・銅 ・赤銅 ・四分一 など、使用する金属も日本特有の合金が多く使用されます。

各金属の融点や硬さを理解した上で作らなければならないので、制作できる作り手も少ないのが実状です。

 

木目金の歴史

木目金は江戸時代初期、現在の秋田県出羽の職人《正阿弥伝兵衛》(しょうあみでんべえ)によって考案されました。

中国の漆芸技法《グリ彫り》に着想を得たと伝えられており、開発当時は刀の鐔など刀装具の装飾として、その後喫煙具や花器・茶器など使用用途が広まっていきます。

江戸時代に確立された技法ですが、明治時代の廃刀令を機に技術は段々と失われ、一度は完全に途絶えたと言われております。

昭和に入り、発祥の地秋田県の職人や海外の日本刀研究者らにより復活を遂げました。

現在は数校の大学機関や秋田県新潟県の職人が制作に取り組んでいます。

 

木目金制作の重要点

木目金の作り方は人により様々ですが、まず共通する点として ・接合前はよく研磨し、酸化を予防する ・圧力と温度が大事 この2点が重要になります。

また、加熱方法は大きく2通りになり、 ・バーナー等で融点ギリギリまで熱する方法 ・電気炉等で、管理された温度帯で長時間(3〜10時間程度)加熱する方法 のどちらかが主流です。

各加熱方法のメリットデメリットをまとめますと、

 

<バーナー法>

メリット

・比較的短時間での接合が可能

・温度や状態を視認できる

デメリット

・融点ギリギリを攻める経験が必要

・融点や熱伝導率の離れた金属同士には向かない

 

<電気炉法>

メリット

・バーナーを扱うスキルがいらない

・温度設定により、条件が安定しやすい

デメリット

・接合時間が長い(電気代も高い)

・接合温度と時間の情報が予め必要

 

となります。どの金属をどのくらいの大きさで接合するかで使い分けられると良いでしょう。

 

接合手順

①金属板の研磨

先述の通り完璧に研磨します。

ここで酸化膜が残っていると剥がれの原因となるので裏表はもちろんのこと、厚み部分も含め耐水ペーパーや砥石等で念入りに研磨します。

研磨後はゴミが一切残らないように拭きあげます。

ティッシュの塵すらも致命的です。

 

②積み上げ

指紋がつかないよう丁寧に且つスピーディに積み上げます。

また、積み上げのズレも剥離の原因になりやすいので、きちんと揃えます。

 

③固定

分厚目の鉄板やステンレス版に挟み、ボルトや万力でしっかり固定します。

その際、固定用の板と地金がくっつかないように、との粉や雲母板等で地金をカバーします。

固定後は加熱時の酸化を防ぐため、フラックスやとの粉を断面に付与します。

④加熱

加熱時の注意はとにかく酸素を入れないことです。

バーナーでも電気炉でも一度加熱を止めてしまうとバックドラフトのように酸素が入り込みます。

一度加熱を始めたら、加熱終了まで気が抜けない作業です。

少しでも予防するために炭を入れるのもいいでしょう。

加熱温度は地金が溶け出さず拡散接合可能な温度を作ります。

バーナーにしろ電気炉にしろ経験が必要な作業となりますので、木目金制作で一番難しい仕事がこの作業です。

 

⑤圧延

加熱接合が完了した地金を薄くまたは細く伸ばしていきます。

焼きまなしと圧延を繰り返しある程度の薄さまで伸ばしますが、焼きなましが甘かったり加工硬化が強すぎると剥離の原因になりますので、慎重に伸ばしましょう。

接合時の1/3〜1/2程度を目指します。

 

⑥模様作り

薄くなってきた地金に模様を施します。

幾重にも積層した地金を彫り、彫った形や深さにより模様が出てきます。 道具はボール盤やリューター・鏨などを使いますが、彫りが深過ぎてしまうと次の更に圧延する工程後も窪みになってしまうので地金厚の1/2以上は彫らない方が良いでしょう。

 

⑦再度圧延

模様作りと圧延を繰り返します。

初めに彫った模様は大きく伸びていき、終盤に彫った模様は細かく残るので、ある程度の計画を持ちながら伸ばしましょう。

 

⑧木目金地金完成

必要な厚みまで伸びたら地金の完成です。

木目金を使って制作した作品は鏡面だと模様が見にくいので、お好みの艶消しまたは煮色仕上げ等で表面を処理します。

 

以上が木目金の制作方法の流れです。

とてもざっくり書いてしまいましたが、ご希望と機会があれば、多くの画像や動画を使ってしっかりまとめたいと思っております。ご興味持っていただけましたら嬉しいです。

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筆者プロフィール

丸藤 皓平

東京藝術大学工芸家鍛金専攻修士課程修了

Day0ディレクター兼制作者 工芸やアート作品を制作発表する傍ら、東京で彫金・鍛金技法を教える講師として活動。

5000本以上の指輪のプロデュースをした経験から2022年よりジュエリーブランド《Day 0》を立ち上げる。

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